だからこそ





宛先が空白で送れないメール
知らせたいのに知られたくない
本文だけがだらだらと延びる
誰にも見つからない様に
抱きしめた背後で祈った月の形が変わる

『大丈夫だよ』
『何もないよ』
うん。ちゃんと笑えているみたい
鏡に映る姿は一応
誰から見てもただの人

カラフルなノート
アレンジされた服
拾い集めた今日の破片で
切れた指先が声もなく泣きだした

涙を枯らして声を殺して
吐き出したいと叫ぶ心を
許さないと命じた両手が絞める夜

青白い月が見せる夢
今すぐ欲しいのそのキセキ
だから光る悪魔に磨いた爪を突き立てて・・・



曲がる事が出来ないレール
時間が変われば知られてしまう
一人なのに声が聞こえる
走り出した列車の後ろに
手を離した半身を乗せてつかの間の夢を見る

『眠いだけ』
『気にしないで』
あれ。ちょっと不自然かな
ベットに投げ出した手足が震える
日に日に落ちてく演技力

鳴り響くテーマ曲
止まらないカウントダウン
ゆっくりと縁取られてく明日の姿
圧し掛かる重みで静かに視界が溶けだした

音が消えて色が消えて
浮く事を諦めた心から
一つ一つ泡となって離れていく夜

冷たい月が照らす滴
今すぐ全てを凍らせて
そして未来の呼吸と視界にピリオドを・・・



姿を変える月は裏切る
昔聞いた誰かの言葉
だったら最期
その綺麗な三日月で
柔らかく溶けだした心を刺して



涙を枯らして声を殺して
隠したかった言葉を残して
鍵を失くしたパンドラの箱を抱きしめて

青白い月が魅せる夢
今から外れるこのレール
そうしたら明日を知らない世界を見せて。。。







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