きっとその後見る夢は







一年過ごした締めくくり
あれとこれはあそこに入れて
これとそれは袋に詰めて
過ぎた思い出を一つずつ整える


本の間に挟まれた懐かしい表紙
開けば其処は チャイムが聞こえる教室の中




カラフルに彩りを載せて
丁寧に板書するだけで
心はペン先をなぞるだけ

ざわざわと解放されて
幾重にも重なる声の中
小さな吐息に笑顔の準備
教科書を閉じたらカウントダウン

『ちょっとだけ良い?』

君は知らない
その一言を聞きたくて
見やすくしようと色を使って
分かるようにとヒントを書いて

それが良くて数えてしまう
これは只の自己満足
自分がちょっとふんわりしたいだけだもの

予習も復習も好きなわけない
授業終わりの数十秒
交わす一言に未だ慣れない…どうしよう





日付の端に小さなしるし
想いを込めた内緒の落書き
なぞってページを静かに閉じる

話せる程はっきりしていない
伝えられる程しっかりしていない
不安定に揺られる小舟の上に
乗せられる重さはホントに微量

『これありがとう』

今日も聞けた
その一言に詰まる声
『大丈夫だよ』と明るく返して
心で囁く『こちらこそ』

苦手教科があって良かった
唯一繋がる白い糸が
両手でそっと切れないように包んで眠る

桜の季節の分かれ道
残るはほんの三カ月
此処から眺める景色が色づく…もう少し





三年過ごした最後の日
思い出以外をカバンに入れて
記憶を溢れる涙に詰めて
皆と交わす言葉を納める


短くも長い旅を終えて帰った心は
日暮れた部屋でぬくもりを抱えて


本棚に戻った甘い記憶
眠りについた二人の姿
しるしの数だけ交わした言葉
またいつか触れる時まで


『今までありがと、またいつか。』






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