傍らに白澤    

小指に蝶





するりと抜けた糸の先
あんなに自慢した風船は
戸惑うことなく放たれた


手を離しちゃだめだって
周りを見なきゃ駄目だって
十分知っていたはずなのに


触れた瞬間に
手に入れたものだと
勘違いした自分主義


大事にするのは知っている
知らなかったのはそのやり方
掌に納まるイトだけ見つめ
繋がる余裕に目が霞んでた




するりと抜けた糸の先
見上げた空を漂う風船は
風に任せて自由を手にした


とがった枝が気になって
すれ違う鳥が気になって
守るんだって約束したのに


引っ張って歩いて
ついてくるのが当たり前だと
思いあがった自分主義


伝わってると思いこんで
聞いてみた事もなかったんだ
届かなくなってやっとわかった
首を痛めても見上げたまま走り出す




思いつく先、面影が溢れる

つま先立ちで、伸ばした指先

今度は同じとこから見たい

今度は隣で聞いていたい




大事にするのは知っている
分からなかった気持ちを知った
もう同じ思いはさせないからと
大きく広げた両腕で包み込む
何よりも繊細な綺麗な心

割らない様に

割れない様に




 
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