水面花






いつかの私が其処にいる

見間違えるはずなんてない

だって私自身が言っているんだもの

『こんな所で何をしてるの』



片目を瞑って歩くくらいは

一人でだって大丈夫

塗りつぶされた鈍色の世界は

深くて高くて冷たくて痛いの



私から出ていったもう一つの視界が迫る

耳をふさいで叫ぶのは

強がっている事を自覚しない為のすべ



私が私で息をするため

手を離したのは誕生日が同じ影

鏡を見なくても証はずっと

消えることなく刻まれてるから


それでも馬鹿で

学習できない私の事を

信じれないから現れるなら

私にそれを振り払うなんて出来はしない







後悔しない毎日を

飽きた台詞に過剰反応

だって所詮は誰かの傷口

『だからあの時言ったでしょ』



余命の宣告は決まって突然

消化するほど時間もない

覚悟の無いまま迎えた世界は

歪んで狭くて暗くて寂しいの



私だけが一人だって背中を合わせた私が呟く

両手を離して聞こえたのは

胸に閉じ込めたはずの小さな『…ごめん…』



役目を終える影が見せる

少し歪んだ世界が懐かしい

瞬きをするたびに面影が

一生傍にいると話しかけるから


それなら今が

深海に引きずられた私でも

水面に映る月明かりが見れるかもと

もう一度夜を待とうと瞳と願う






一つ 二つ 零れて 昇る




発した音を数えて眠る




昨夜の泡沫が届く時




星空のもとに花開く思い出








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