次の迷いある世界







最初は俯くだけだった
足元が見えれば十分進める
適当に合わせる相槌が
過呼吸を起こして酸素を奪う


次第に足が硬くなった
重たくなったから歩くのをやめる
誰にでもわかる方程式は
私には適応されないらしい


引きずられ突き付けられた世界はまるで
古い巻物の地獄絵図


舌なめずりをする餓鬼たちが
縛られた欲から手を伸ばす
振り払うために握った刀が
私を映す事はもう叶わない




顔を上げれば一人だった
薄暗い底で抱える両足
励ますのも許すのも
たった一つ染みだす吐息


落ちる滴に見知った景色
懐かしい記憶が朧(おぼろ)に溶けゆく
裁断までの僅かな時間は
夢を見るには長すぎるようで


私の向かいで見上げる私に示す未来(さき)
浮かび上がった言葉の余韻


鏡に映る罪の数々
照らし合わせた私の姿
笏を持つ手が告げた世界へ
篁(たかむら)に背を向け歩きだす




鎌を持って餓鬼と向き合う
縛る鎖は左手にたずさえて
最期の懺悔を聞くために
私の最期を迎えるために

地獄絵図の終焉は
封じて井戸に還しましょう









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