エルピスの震悚




いけないと必死になって
駄目だって言い聞かせているのに
ガタガタと音を立てる歪な蓋に
腰をかけてから幾年月


( その手で耳を塞いで )


箱の中に敷き詰められて
塗り付けれたのはパステルのペンキ
何度も重ねられた表面は
次第に凹凸に覆われて
醜さが鮮やかになっていく


( その手で目を塞いで )


印刷された道徳は
日を浴び晒され擦れて
焼きつけばの優しさが
軋む音を立てて揺れ
教わったはずの思いやりの
使い方がわからないまま


( 開いたらきっと )


隙間から昇る黒い煙に
じわじわ裾から染まっていって
そろそろ心臓に手が伸びる
少しでも先へと見上げる宙


( 見える世界の吐く息が煙る )





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