流砂が呑んだ月







霜が付くほど冷え切った感情は

そう簡単には呼吸はしない

濡れた両手では痛いだけで

掬うこともままならない



社会が許しても世間は許さない

規則を守っても道徳に責められる



折り合いのつかない問題を

無数の正義で突きかざし

すり替え置き換え

解決した気に酔い潰れたまま





思い通りになるように

ならなけれはイケないと

箱庭のコトワリを振りかざすヒトカタを

覗く左目は曇りガラスに邪魔されて



背景が見えない

足場が分からない

雑音が鳴りやまない

悪臭がきえない



時間が経つほど鋭利に変わり

無数の事実が 複雑な道徳が

時間をかけてこの身を引き裂く





痛みが消える事はなく

いつまでも付きまとい

何処までも響き続け


    そして


今日が終わればまた一つ

心海に沈める傷が増えゆく





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